ネット広告の現状に思う事

本来は、広告モデルって無料でコンテンツが楽しめる良い仕組みのはずです。
ただ、最近の未成年が使うスマホサイトの広告は、詐欺広告・おとり広告・下品な広告など不適切広告であふれています。これは大きな問題ですが数年経っても改善されていません。

購買力の高いユーザが多いサイトの広告運営は順調そうですが、そうでないユーザが使うサイトのネット広告は質に問題があると考えています。

ネット広告のターゲティングについて

ネット広告はサイト閲覧数に応じた広告収入を発生させることが求められています。最近の広告配信システムは様々な技術を用いてユーザーのネット上での行動やその他の情報を収集し、ユーザがどのような属性であるかを推定し、ユーザーに合わせた広告が表示されます。この技術はより正確になってきています。例えばアクセス元も判定に使われていますので、一流企業のネットからアクセスされた端末と、無料公衆Wi-Fiからアクセスされた端末は全く違う広告が配信されます。

話を簡単にするために、あえてステレオタイプ的に2つのユーザグループを想定します。

グループA……購買力の高い社会人。自由に使えるお金が多く、ネットでも高額の買い物をする。高級時計や車も購入する可能性がある。ネットは以前より頻繁に使用していてネット上の作法に慣れている。

グループB……購買力が低い。基本的にネットでは買い物をしない。生活必需品以外は購入しない。インターネットにはそれほど詳しくない。社会的弱者となりやすい未成年者や高齢者なども含まれるグルーブ。

(雑な計算ですが)サイトの運営コストは閲覧数によって規定されますので、運営者は閲覧数に応じた広告収益を期待します。例えば1PVで0.1円の収入を期待するとしましょう。

グループAに対するネット広告は簡単です。高額な商品の広告を控えめに表示させるだけです。高額商品の広告費は非常に高いため、成約率が非常に低くても構いません。成約報酬が30万円(#)なら、300万PVで1人が購入すればいいだけです。このグループはネット上で購入することに抵抗がありませんし、高額な商品を購入することにも抵抗がないため運用は楽です。結果としてグループAへのネット広告は、控え目で上品で誠実なものになります。逆にグループAに詐欺広告を表示してもクリックしませんので意味がありません。

一方グループBへの戦略は大変です。普通のやり方ではネット広告から収益が発生しません。グループBでもグループAと同等の広告収益を出すにはどうすれば良いでしょうか。なんらかの方法で1PV0.1円を発生させようとすると下記のような悪質な広告が表示されます。

  • 高額な偽のセキュリティソフト広告を載せてユーザを騙して契約させる
  • 誤クリックによる収益を狙って動く広告を載せる
  • 通常のサイトでは排除されてしまう下品な広告を表示させる

広告単価については一般的に成果報酬の広告は高いです。クリックのみで購入不要の広告は単価が低いです。クリック不要の表示だけの広告はさらに単価が低くなります。結果として成果報酬広告に比べて、表示だけの広告はより多く表示され、下品な広告がたくさん表示される見にくいサイトになってしまいます。どんな広告が表示されるかは広告配信システムによって自動的に選別されるため、グループBに対して下品な広告が配信されていることをサイト運営者が認知していない事も多いです。

(#)投資マンションだったら1件成約に広告費50万円出すって業者もあります。この広告が良質と言うつもりはありませんが、高額案件はこれくらいのお金が発生する事を知っていただければと思います。身近なものであればクレジットカード申し込みなら1件1万円を超える案件もあります。
https://twitter.com/nagoya_kabuoff/status/1035501832250904577

問題点について

グループBに属する未成年や判断能力が下がった高齢者などには悪質な広告が表示されます。結果として、社会的弱者がネット広告に騙される事案が発生します。
一方、グループAに属するメディア関係者、業界関係者のインターネットには上品な広告が表示され、この問題には気づきにくいです。現在は、例えば高級マンションを頻繁に検索すれば容易にグループAと認識され、広告を高級マンションへ変更することができます。ただ広告配信システムのターゲティングはより正確になっていますので、今後は広告配信システムを騙す事は困難になると想定されます。するとグループAとグループBのインターネットは、さらに違ったものになります。

 

ではどうするか

通常の方法では収益が見込めないユーザBに対しても収益を発生させるために、モラルが無視されているのが現状です。

まず対策として、悪質な広告を排除するシステムが必要です。広告配信業者が共通のユーザが簡単に報告できる不適切な広告の通報窓口を作って広く周知したら良いのにと思います。例えばLINEでスクリーンショットを送るだけで通報完了できる連絡先があったら良いなと思います。

ただ悪質な広告を排除するとグループBのユーザには配信する広告がなくなり、グループBからは十分な広告収益を得られなくなると思います。ただこれは仕方ないことかなと思っています。

一つの解決策は有料モデルへの移行。最近だと、amazonプライムビデオ、楽天マガジン、Dキッズなど低額のサブスクリプションモデルのサービスが沢山あります。ゲームアプリですと一部の課金ユーザのおかげで無料で広告無しで楽しめるゲームもたくさんあります。
個人が単独での参入ならnote.muなどですが、個人向けのサービスはまだまだこれからと思っています。GoogleのFunding Choice(#2)は良い試みだと思います。マイクロペイメントが発達すればいろんな解決策が出てくると思います。直近のサービスではscraivが面白そうと思っています。

(#2)Google、サイト閲覧者に対し料金を支払っての広告ブロックという選択肢を提供する仕組みを開始へ | スラド IT

 

広告ブロックについて

広告があることで、みんなが平等に無料でコンテンツを楽しめられるのは素晴らしい事と思います。

しかしながら、サイト運営者・広告配信業者が収益に固執して広告の質への配慮が圧倒的に不足している現状では、ユーザが自衛策として広告ブロックを使うのもやむを得ないと考えています。

目指すべき将来は、ユーザは広告ブロックなしでインターネットが快適に楽しめ、サイト運営は無料でも有料でも可能である事と思っています。

——–
最近のネット広告について思うことを書きましたが、この問題に具体的にどうするのか書かれた記事があまりないため、他の方の意見も聞きたいところです。